「運動」がうつの改善に良い理由

クラウス・ベルンハルト氏の著書『落ち込みやすいあなたへ 「うつ」も「燃え尽き症候群」も自分で断ち切れる』にて、最新の科学に基づいた分かりやすい解説があります。

うつの原因はひとつではなく複合的であるというポイントが大前提となり、改善策も一つではなく複合的なアプローチの必要性があることをまずは必ず念頭に置いて頂けたら幸いです。
以下には、その中で「運動」にフォーカスを置いた改善策を取り上げたいと思います。

今日取り上げたいのは【BDNFタンパク質の不足と過剰なキヌレニン】の存在です。

十分な運動は「太陽光」と「適切な栄養」とあいまって、BDNFタンパク質を作る決定的な要素となります。BDNFとは、脳由来神経栄養因子の略で、新しい脳細胞やシナプスの成長を促すタンパク質です。言わば、「脳の主要な栄養素」で、これが多いほど「記憶力と思考力」が向上し、結果として「落ち着き、満足感、幸福」を感じやすくなります。
一方、BDNFタンパク質が少なすぎると、集中力や記憶力の低下がみられ、これが長期間続くと、「不安や抑うつ状態、燃え尽き症候群、睡眠障害」が起きやすくなります。また、アルツハイマー病やてんかんにもかかりやすくなるそうです。

もう一つの重要な栄養素は「PGC-1α1」と呼ばれるタンパク質です。これも主として「筋肉を十分に動かすことによって」作られます。このタンパク質は「キヌレニン」と呼ばれる体内のアミノ酸を変化させ、キヌレニンが血液脳関門を通過できないようする働きを持っています。
「脳内のキヌレニンが多すぎると、神経細胞の機能が変化しうつ病を引き起こす」という2014年の研究論文が発表されています。アルツハイマー病や統合失調症でもキヌレニンが多すぎることが関係しているという研究がありあす。キヌレニン濃度が高すぎることと、体内の炎症には因果関係があることが分かっています。

そのため、定期的に運動することで、キヌレニンを無害化するこのタンパク質を作り出すことが、これらの症状改善や予防に繋がるということです。

この書籍の中でも強調されていますが、こうしたタンパク質はあくまで「構成物質」。新しいシナプス接続を数多く構築するのに必要な「建材」であり、それで何を立てるのか私たち自身がそのための「設計図」を決めることの重要性が述べられています。つまり、うつ病を治すためにジョギングを始めたとしてもそれだけで必ずしも元気になれるとは限らず、BDNF濃度が増加することを十分に活用するためには、自分自身の中でいくつかの「目標」を決めておくことが重要だということです。自分が自分らしく健康に生きるための見取り図といっても良いかもしれません。環境要因を含め、そうした「多角的な取り組み」と「運動」、それらが相まってより高い効果を感じ取れるものになるのだと思います。

こうしてこの記事をまとめている私自身、実は2018年に重度のうつ病と診断され、それ以来専門医師の診断と並行して、様々な改善策に取り組んでいます。そうした実践の中で効果的だと感じたものをこれからも共有させていただければと思っています。自身の経験が同じ経験と苦悩を体験している方の少しでもお役に立ちましたら心から嬉しく思っています。
もし今現在心配な症状があられる方は、まずは何より専門科や周囲に頼ることからはじめてください。うつ病患者はとりわけ人に頼ることが苦手で全てを自分自身で抱え込むことが多いと思います。だからこそあえて、人に頼ってください。周囲にあなたを助ける余地を与えてください。決して一人で悩まないで。うつを抜けた時に再び「あぁ、生きていてよかった」と必ず実感することができます。あなたと私、場所は離れていても心を通わせることはできると信じています。

投稿者: Midori

ヨガインストラクター・英語学習サポーター